阿部邦子(十八成協議会役員、作家)



東日本大震災前の十八成浜は美しい集落でした。石巻市街地方面から鮎川浜に向かって来ると、突然に右手に海が開け、真っ白な砂浜が広がっていました。一昔前は鳴き砂で歩くとキュッキュッと音がしました。私はそれを聞くのが楽しくて、よく早起きして砂浜を歩いたものでした。遠浅で波が穏やかということで、宣伝などしなくても海水浴場としてにぎわっていました。
そしてどの家も庭が広く、まるで競うようにしてそれぞれの家が美しい花を楽しんで育てていました。

東日本大震災後、十八成浜は一瞬で砂浜も家々も花たちもなくしてしまいました。

十八成浜には老後を豊かな気持ちで暮らしたいと越してきた方が何人もおいでで、その中の一人、仮設住宅に住むKさんがボランティアの人たちに言ったのです。ある日ぽつりと。
「あの桃源郷のようだった十八成をあなた方にお見せしたかった」と。

それが、ボランティアの人たちと一緒に外仕事をするようになっていた阿部恭一氏の心に響いたのです。恭一氏はビーチプロジェクトを推進する十八成ビーチ・海の見える丘協議会(以下、協議会)の会長である沼倉憲一氏から「十八成にあの白い砂浜を取り戻したい」と真っ先に声をかけられた人です。
阿部恭一氏は震災以後ずうっと「何もかもなくなったからこそ、新しい国づくりができるのではないか」と考え続けていて、Kさんの言葉で心が開いたのです。
「きれいな白い砂浜を取り戻すにはまだ数年かかる。美しい十八成にするために、まず花の木を植えよう。そしてきれいな砂浜を取り戻し、十八成を、大震災前より美しい桃源郷にしよう。そのために俺は生かされたのではないか」と。

当初は「1,000本の桜の木を」というところから話し合いが重ねられました。でもプロジェクトとして議論しているうちに、協議会の事務局長である久田光政氏が「十八成だけに目標は1,800本。でも桜の木だけではどこにでもある。アーモンドの木もどうだろう?」と、提案しました。実は、久田氏は十八成でがれき撤去活動をしたことのある園芸屋さんや自然の生物に造詣の深い方から、桜やその他の花の咲く樹木について話を伺う中で、アーモンドの植樹を思いついたのです。久田氏が調べてみると、アーモンドが日本全国で栽培可能で育てやすいこと。日本で最も多くアーモンドが植えられているのは静岡県浜松市のはままつフラワーパークの約600本。神戸市東灘区にある東洋ナッツ食品さんの工場敷地内には30数年前から約30本のアーモンドが植えられていて、毎年3月下旬に開催されるアーモンドフェスティバルは週末の2日間に2万人のお客様が来られるということなどが分かりました。

最初はアーモンドと聞いて私は違和感を覚えました。唐突な気がしたのです。でも実はアーモンドは「バラ科サクラ属」。花も桜に似ています。

石巻市が十八成浜に砂浜を、という十八成協議会の復興構想を認めました。今後は県道のことをはじめ、話しあうべきことが山ほどあります。今のところは1,800本もの木をどこに植えていいかまだ見えていない状態です。とりあえず阿部恭一氏が2箇所の山林のオーナーさんに植樹の了解をいただきました。
桜は大きく枝を伸ばすため木と木の間を10m開けなければならず、アーモンドには2.5m必要で、今、植樹用に確保できた土地には桜は30本、アーモンドは100本植樹できる、と石巻市蛇田のことぶき園芸さんに教えていただきました。なお、ことぶき園芸さんには苗木の購入、植樹、そして今後の管理なども担当していただきます。

桜の木は、岐阜さくらの会さんに苗木費用、植樹諸経費、鹿害対策費などもあわせて2年~3年もののヤマザクラ30本のオーナーさんになっていただくことになりました。今年結成20周年を迎えられた岐阜さくらの会さんは、国内はもとより世界24ヶ国36都市に、また2013年には宮城県気仙沼市に100本のサクラを植樹されています。

一方、アーモンドの木のオーナーさんは一本ずつ、お一人ずつ募集することにしました。そこで1年もののアーモンドの苗木を、植樹経費、鹿害対策費などを含め1本4,000円で募集させていただきます。牡鹿半島はかなりの野生の鹿が生息しており、その被害は大震災前からありました。畑の野菜などを根こそぎ食べてしまうため、鹿が入って来られないように、どの家も畑や花壇を網で囲っていました。その鹿害対策には結構な費用がかかります。また、苗木は植えっぱなしでは育ちません、木の周りの草刈りや肥料や消毒に有意義に使わせていただきます。

オーナーになられた方のメリットは・・・、ご自分の木を持てる、それは震災被災地十八成浜の復興につながるというロマンを持てるということにつながると思います。5年後、10年後、20年後・・・、ご自分の花を、お子さんやお孫さんと見にいらしていただけたら楽しいですね。

これは被災地復興応援プロジェクトです。がれきだらけだった十八成浜。今の荒涼とした十八成浜をご存知の方、そしてなかなか現地には来られないけれど、私にできることは??と思ってくださっている皆さん、どうかお力を貸して下さい。私たちと一緒に桃源郷を作りましょう。

私達夫婦には子供がいません。だからどちらかがあの世に旅立っても、どちらもが旅立っても、この世で生き生きと花開け!!の思いをこめて、2本の木のオーナーとなって、夫婦の木をこの世に残したいと思えました。

桜の木のオーナーも、来年にはお願いすると思います。

桜の木の下を
アーモンドの木の下を
私は歩くの
たとえ身体は消えようと
あなたと一緒に歩き続ける
手を取り合って
子どものような笑顔になって
その幸せを 楽しさを 
辛さを抱えたあなたにもあげる
だからあなたも歩きましょう
桜の花咲く樹の下を
アーモンドの花咲く樹の下を
桃色に染まった道を 空気を
心も桃色に染めて歩こう

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